早期英語教育にはデメリット(弊害)もあり、特に母語への影響については考える必要があると、度々話題になっている。
一方で、英語はなるべく早く始めるべきという意見もあり、幼児向けの英語教材が次から次へと登場するのを見ると、何を信じたらいいのかと迷子になる人も多そうだ。

ただ個人的には、母語(=日本語)を疎かにせず、二言語のバランスを考慮して取り組んでいれば、子どもにとって特に大きな弊害にはならないと考えている。


幼児英語教育のデメリット・弊害とは
早期英語教育のデメリットについて考える前に、具体的にどのような点が問題視されているのか、改めて整理してみたい。
- 母語での発話が遅れる可能性
- 母語が育たなくなる可能性
- セミリンガルになる可能性
- アイデンティティ拡散の可能性
- 学力が低下する可能性
- 英語嫌いになる可能性
- 教育費が膨れ上がる可能性
これらを読むと、確かに「大丈夫なのだろうか」と不安視されるのもよく分かる。
しかしこういった影響を受けるのは極端なケースであり、我が家のように「日本語話者の家庭で育ち、日本の教育機関に通う子どもは、早期から英語学習を始めても問題にならない」というのが、多くの専門家の意見らしい。
インター(プリ/スクール)への通園通学を考えるなら話は別だが、いわゆる「おうち英語」が母語へ及ぼす影響というのは、取り組み次第で予防できるもののようだ。
母語への影響とセミリンガル
セミリンガルとは、母国語も第二言語もどちらも中途半端な状態のことを意味する。
たとえば、どちらも流暢に話すことはできても、「学習言語」としては足りていない状態だ。
では、こういったリスクを解消するためには、どのような点に気を付ければいいのだろうか。
日本語と英語、バランスのとれたインプットを心がける
極端な例だが、英語教育を重視するあまり、「朝から晩まで英語漬け」「家庭内の会話は英語優位」「英語ネイティブのベビーシッターやアフタースクールを長時間利用」という状態を続ければ、日本語に触れる機会がほとんどなくなり、日本語の発達が遅れるのは当然のことと言えるだろう。

しかし、日本語でしっかりとコミュニケーションを取り、日本語の絵本を読み聞かせ、周囲の友だちとも楽しく遊ぶ。
そんな毎日の中で、部分的に英語を取り入れたところで、日本語の発達を阻害するほど大きな影響を与えるとは思えにくい。
実際に、英語育児(おうち英語/バイリンガル育児)によって二言語を高いレベルまで習得させた例は世に溢れているし、子どもの英語教育に関する書籍を何十冊と読んでも、セミリンガルやダブルリミテッドに関する懸念は払拭されている。
ただ、私自身も「はじめから不安がなかったのか?」と聞かれれば、そうとも言い切れないのが正直なところである。
だからこそ、長女が生まれてからは毎日たくさんの絵本を読み聞かせてきたし、親子間のコミュニケーションは日本語を原則として、日々の対話を大切にしてきた。
- 日本語でのコミュニケーション
- 絵本(日本語)の読み聞かせ
- 学習(日本語)のサポート
- 日本の教育機関への通園通学
日本語(母語)>英語
おうち英語の取り組み方として、英語での語りかけを促す(あるいは必須とする)メソッドも多いが、我が家は原則として日本語を重視。
それを貫いてきた結果、長女は同級生と比べても日本語の遅れがあるようには見えず、英語力に関しても順調に育っているように思う。

アイデンティティの拡散
家庭環境や教育環境にもよるが、複数の言語や異文化の狭間で成長していく子どもは、アイデンティティを見失うこともあると言われている。
ただこれに関しては、日本で生活し、日本の教育機関で勉強していれば、特に心配する必要もないだろう。
むしろ、社会がどんどんグローバルになっていく中で、英語を通じて多様な価値観に触れることは、とても良い経験になると思う。
学力低下と英語嫌い
母国語を疎かにすれば、学校での勉強にも支障が出てくるのは当然だ。読解力や論理的思考力に欠ける分、国語だけでなく算数や理科の成績にも影響するだろう。
だからこそ、日本語がある程度定着した後でも、引き続き母語として育てることを忘れてはならないし、親という立場から学業をサポートすることも重要だと思っている。
そして、子どもが英語嫌いにならないよう、詰め込み方式のようなやり方は避けるべきだ。
特に幼児期においては、勉強ではなく、一つの言語として自然に吸収できるような環境作りを意識している。
それが難しくても、「英語に触れる時間=ママと過ごした楽しい思い出」になるよう、娘たちの興味関心に目をくばりながら、最適なツールを用意してあげたいと思っている。
幼児英語教育に対する肯定的な意見
せっかくなので、早期英語教育に関して肯定的な意見もいくつか紹介したい。
小さな子どもは聞き慣れない外国語の音声に対する抵抗感も少ない。この時期に英語絵本や歌を通して「なんとなく分かって楽しかった」という経験を重ねることが、心理面でもその後の学習の素地になる。
Newsweek日本版『0歳からの教育』
英語の授業や受験英語によって、英語に対する嫌悪感や苦手意識を持ってしまう子どもも少なくない。
しかし幼児英語教育を行うことで、そのリスクを予防することが可能になると言う。
小さな頃から英語に触れていると、英語にアンテナが向くようになり、街中を歩いていても英語表記に興味を持つようになる。また、成長して外国人と接する機会があっても、臆することなく対応できるようになる。
『モンテッソーリ教育×ハーバード式』

他にも、早期英語教育に関して興味深い研究報告がある。
幼い子どもの脳は極めて柔軟性が高いため、複数の言葉を抵抗感なく吸収することができる。また、LとRの発音を見事に聞き分け、使い分けることができる。
バイリンガルの高齢者はモノリンガルの高齢者に比べ、認知症の発症年齢が数年遅い。
複数の言語で育った子どもは、他の子どもより言語の習得が遅れるケースもあるが、それぞれの言語に関して家庭で十分なサポートが得られれば、小学生の間にモノリンガルの子どもの言語水準に追いつける。
私の場合、リスクを理解した上で、どうすれば上手くいくのかを考えながら取り組むことが大切だと思っている。
せっかくなら、あまりネガティブには考えず、楽しくトライしたい。いつでも修正することはできるし、止めることもできるのだから。
